【2026年サッカー男子W杯】 「受け身」で「崩壊」……イングランドの敗北は守りを固めた戦術のせい?

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ニール・ジョンストン BBCスポーツ記者
イングランドは、1966年以来となる男子ワールドカップ(W杯)決勝進出を目前にしていた。
米アトランタ・スタジアムの時計が後半39分を指した時点で、彼らは現世界王者のアルゼンチンを相手に1対0でリードしていた。そして、そこから全てが恐ろしいほどに悪い方向へ向かった。
アルゼンチンのMFエンツォ・フェルナンデスが後半40分に強烈なシュートで同点ゴールを決め、続いてFWラウタロ・マルティネスがアディショナルタイム2分にヘディングで決勝点を挙げた。どちらのゴールもFWリオネル・メッシのアシストを受けてのものだった。
こうして、イングランドのW杯の夢はあっけなく崩れた。
イングランドは後半10分、FWアンソニー・ゴードンのゴールで先制点を奪った。それはチームの懸命な努力の成果だった。しかし、その後は守備に徹してしまい、憂き目を見る羽目になった。
イングランドのトーマス・トゥヘル監督は守りの戦術を採用した。このことが、とてつもなく裏目に出た。
そして、19日(日本時間20日)にニューヨーク・ニュージャージー・スタジアムで行われるスペインとの決勝戦に進出したのは、イングランドではなく、アルゼンチンだった。
ではイングランドは1対0でリードした時点で、もっと攻め込むべきだったのだろうか?
イングランドは攻め込まなかった。先制点を奪ってから逆転を許すまでの間、ボール支配率はわずか12%だった。
トゥヘル監督はイングランドが先制すると、DFのエズリ・コンサ、ダン・バーン、ニコ・オライリーを投入した。FWのマーカス・ラッシュフォードとイヴァン・トニーを送り出したのは、アディショナルタイムの時計がかなり進んでからだった。
「(イングランドは)崩壊した」。元イングランド代表キャプテンのウェイン・ルーニー氏はBBCスポーツにこう言った。
「すべては監督と彼の下した決断から始まった。あまりにも受け身すぎた」
「世界チャンピオンを相手に、そんな手は通用しない。これは最大の試練だったが、イングランドはしくじった」
では、イングランドはアルゼンチン戦で優位に立っていたにもかかわらず、なぜ守備に回ったのか? そして、イングランドが決勝に進出できなかったのは、後半のトゥヘル監督の戦術のせいなのか?
「采配の大失敗」

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イングランドは今大会で粘り強さを見せ、決勝トーナメント1回戦でコンゴ民主共和国を、準々決勝ではノルウェーを、ともに劣勢からの逆転で下した。
「ノルウェーや(決勝トーナメント2回戦の相手の)メキシコには持ちこたえた。ただ、どちらのチームも、ボールを扱う技術や相手のミスにつけ入る能力で、このアルゼンチン代表チームほどのクオリティーを持ち合わせていない。それが違いだ」と、元イングランド代表主将のアラン・シアラー氏はBBCスポーツに話した。
「トゥヘル監督はかなり早い段階で手を打った。それが裏目に出た」
イングランドは、後半10分にゴードンが先制点を挙げたことで、宿敵相手の準決勝で完全に主導権を握ったかに見えた。
イングランドのファンは熱狂的に祝ったが、スリーライオンズ(イングランドの代名詞)はその後、前へ出ずに守備に徹した。
「トゥヘル監督による采配の大失敗だった」。1994-95年にブラックバーンでプレミアリーグ優勝を果たしたクリス・サットン氏は、BBCラジオ5ライブでこう話した。
「アルゼンチンのような優れたチームを相手に、30分間守り抜くなど無理だ」
「すべては監督の責任だ。彼が選手を交代させた。彼は消極的だった。なので、『トーマス・トゥヘル監督がこのチームを前進させられると、なぜ信頼できるのか?』と私は聞きたい」
イングランドは、過去にもアルゼンチンに敗れている。
1986年のW杯では、ディエゴ・マラドーナ選手の悪名高い「神の手」ゴールで敗北した。1998年大会ではPK戦の末に敗れ、深い心の傷を負った。こうした過去を、誰が忘れられるだろう。
しかし、今回の敗北については、イングランドは自分たちを責めるしかない。
「ノルウェーとメキシコはイングランド戦でパニックに陥った」と、元イングランド代表GKのジョー・ハート氏はBBCスポーツに話した。
「しかし、アルゼンチンにはパニックの様子がまったく見られなかった。自信にあふれて、偉大なリオネル・メッシをポケット内で自由にプレーさせられると気付いていた。そうやってアルゼンチンは、イングランドを好きなように振り回していた」
「かつては、イングランド代表は重要な試合でリードしていても守備に回ってしまうと、ギャレス・サウスゲイト前監督がしきりに批判された。しかし、その点では、今の代表チームも何も変わっていないようだ」
イングランドのサポーターは、トゥヘル監督による選手交代にひどくいら立った。
1対0でリードした後、監督は追加点を狙うだろうと大勢が予想した。しかし、ドイツ人のトゥヘル監督はそうせず、守備強化のために3人を代えたのだった。
トゥヘル監督は後半27分にゴードンに代えてコンサを投入。5バックに変更した。その10分後にはバーンとオライリーを入れ、さらに守備を増強した。
アディショナルタイムになって、FWのラッシュフォードとトニーを投入したが、時すでに遅しで、対応としても弱すぎた。
「1対0の時点での交代を見て、もしアルゼンチンが得点したら延長戦に持ち込めないと思った」とルーニー氏は話した。

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元イングランド代表DFのマイカ・リチャーズ氏はBBCスポーツに対し、「イングランドが最初のゴールを決めた時、2点目を狙うべきだった」と話した。
「確かにアルゼンチンの実力は認めるが、イングランドが守備に徹したおかげで、アルゼンチンはリズムに乗ることができた」
「1対0のリードを守り切ろうとした」
アルゼンチンのGKエミリアーノ・マルティネスでさえ、先制点を決めたイングランドが守りに回ったことで、試合の流れが変わったと認めた。
「時には、勝っている時こそ、前に進む必要がある」とも、マルティネスは述べた。
「ゲームプランは変更できない。しかし、イングランドはそうしたのだと思う。だから、ディフェンダーを増やした」
もちろん、トゥヘル監督の采配の下でイングランドは、前回大会の成績を上回った。2022年大会でイングランドは準々決勝まで進んだが、そこでフランスに敗れている。
しかし、今回のイングランド代表には、FWハリー・ケインやMFジュード・ベリンガムといった、並外れた才能を持つ選手が大勢いる。
次回のW杯で36歳に近づくケイン主将は、チームはもっとできたはずだと思っているようだ。
「1対0でリードした時、自分たちはリードを守り切ろうとしたようだった。このレベルでは、それでは足りない」とケインは話した。
「ここまで来るために本当に一生懸命努力してきたし、選手たちは走ったり、血を流したり、汗を流したり、涙を流したりと、すべてを出し尽くしてきたから、本当に悔しい」
「相手にしっかりプレッシャーをかけた。ピッチの前方で相当のプレッシャーをかけたので、それでボールを奪い、試合を相手より少しだけうまくコントロールできた」
「得点後、相手が攻撃に人数を増やしたのか、それとも我々がマンツーマンで対応できなかったのかはともかく、とにかく波状攻撃がひたすら続いた」
「こちらはブロックを仕掛けていたが、結局はそれだけでは足りなかった」

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「あまりに消極的」だったと監督
試合後、アルゼンチンを相手に采配を誤ったのかと問われたトゥヘル監督は、「後悔はない」と述べ、選手交代はイングランドが「あまりに消極的」になったことへの対応だったと説明した。
「ギャップを埋めるために5バックに切り替えることにした」
「私たちは得点直後、選手を交代させないまま、あまりに多くのクロスを許し、あまりに多くのチャンスを与えてしまった。そのため、どうにかしようとした」
「責任は監督にある。うまくいかないときは、間違いだったと言うのは簡単だ」
「今日はあと一歩のところまで迫った。今は大会全体を分析する時ではない」
チームを準決勝まで導いたものの、トゥヘル監督の戦術や采配は、先制したにもかかわらず決勝進出を逃したことを受け、今後しばらくは批判の的となるだろう。
元イングランド代表のリチャーズ氏は、「今夜、この最大の舞台で、監督は判断を誤った。彼はそれを受け入れなくてはならない」と述べた。















